日本の「徴税権力」と呼ばれ強力なタッグを組む「マルサと特捜」が、この3月1日の東京地裁の判決で一敗地をまみえました。これは過去にもほとんど例のないことです。

 クレディ・スイス証券の元外国債券部長である八田氏(49歳)が会社からの報酬として、海外の証券口座から受取った株式やストックオプションの約3億5千万円を隠し、所得税を約1億3千万円を脱税したと、2008年12月マルサが八田氏とその関係者を強制調査し1年後に告発、それを受理した東京地検特捜部が1年9か月後に事情聴取を開始し、聴取は3か月に及び、在宅起訴の期間を含め、何とほぼ3年間の時を刻みました。

 判決は八田氏が主張する「株式報酬にかかる所得税も源泉徴収済みと思い込んで申告しなかっただけで、意図的な脱税ではない」の方に軍配を上げました。

そこでこの判例を読んでみると、そもそもこのクレディ・セゾン証券のストック・オプション制度がきわめて複雑なのに加えて、社内の社員への税金の説明が英語の社内便メモで「会社に所得税の源泉徴収義務はない、税務上のことは専門家に相談せよ」といった簡単な説明であったのも問題が大きくなった原因と思われます。

八田氏は、このメモを「読まなかったから脱税ではない」と主張し、マルサと特捜は「読まなかったはずはないから脱税だ」と主張したのです。

結果は、前述の通り「無罪」判決だったのですが、このストック・オプションの課税を巡る裁判があちこちで起きており、その中の1件としても、この3年間という年月はいかにも長いし、しかも被疑者扱いされ、このような捜査方法はいかなるものかと思う次第であります。

税理士法人SETACS