東京都の計画では、築地市場は2016年4月に閉鎖、豊洲新市場の開場は2016年11月です。
 移転の理由としては、昭和10年開場の築地市場の老築化と、23ヘクタールという狭さのために高度な品質管理・衛生管理ができなくなってきたということです。
 移転の対象は「場内市場」のみで、「場外市場」の飲食店や魚屋さんはそのまま築地で営業を続けるので、都は豊洲市場の目玉として大型観光施設「千客万来」の計画を立てました。
 その施設を運営するはずだったのが「大和ハウス」と「すしざんまい」で、「大和ハウス」は施設への搬入車両の通行路について市場側と折り合わず今年2月に撤退を余儀なくされ、「すしざんまい」はすでに報道されたように「断腸の思い、力不足で申し訳ない」と社長が撤退の記者会見で涙しました。
 「すしざんまい」の撤退理由は、「千客万来」に温泉施設を建設し「先客」を呼ぼうとしたのだが、来年3月までだったはずのお台場の大江戸温泉の定期借地権の契約を都が五輪後まで延長したことにより、売上の見込みが全く立たなくなってしまったことによるようです。
 「すしざんまい」の肩を持つわけではありませんが、定期借地権契約とは「土地を貸す側が借りる側の事情を聞かないで契約を終了できる」ものなので、都が大江戸温泉との契約を打ち切るのは全く問題がないはずで、都は入札選考した「すしざんまい」を見限ったとも言えます。
 都側は、「すしざんまいに温泉施設を要請した覚えはない、大江戸温泉の契約延長を伝える約束をしていたわけでもない」とダメを押しました。
 うがった見方をすれば、大江戸温泉の地代は年間3億円で「すしざんまい」の年間1億3千万円より高く、しかも大江戸温泉は今年2月に米国大手ファンドのベインキャピタルへ500億円での売却も決まり、契約切れによる大江戸温泉の廃業は元々考えられなかった可能性もあります。
 これで予定とおりの移転ができるのだろうか、そもそも2016年4月までには築地市場を更地にしないと東京五輪の輸送道路となる環状2号線の完成に間に合わず、もっと基本的問題としては「豊洲」が元東京ガスのガス製造工場跡地であるために豊洲新市場には土壌汚染問題への疑惑が付いて回り、都は否定しますが「豊洲」の土地や地下水には発がん性物質の「ベンゼン」や「シアン化合物」などが残っている可能性もあり、移転の是非さえも怪しくなってきます。
ただでさえ移転費用が払えずに築地の水産仲卸業者のうち100以上が廃業の恐れがあるといいます。
 さてどうなるのか「移転問題」、豊洲には人間の賑わいよりも閑古鳥の鳴き声が響き渡るのか!?
 それにしても「すしざんまい」の社長の6月に出版される本のタイトルが傑作と言ったら悪いのですが、「ダメだと思った時が、夜明け前」、さてさて、夜明けはやってくるのでしょうか。

税理士法人SETACS