福島のお蕎麦屋さんに入ると不思議な食べ物に出会えます。
 お蕎麦はお蕎麦なので不思議なことは何らないのですが、その蕎麦の名前は「高遠そば」と称します。
高遠といえば、長野の桜の名所である高遠城が有名ですが、なぜ福島の地において「高遠そば」が存在するのか、しかもどちらも異常なまでに辛い大根を使っているのか。
 「高遠そば」のなぞ解きをする前に、長野の戸倉温泉でさんざん飲んだ後にNさんに連れて行ってもらった「うどんや」でのことをお話します。そのうどんに 付く辛み大根にはランクがあって、確か「すごく辛い」「辛い」「普通」のランク付けがあり、私は酔っ払った勢いもあり「すごく辛い」を注文しました。Nさ んは「大丈夫ですか、私は食べたことがないけど本当に辛いらしいですよ」と伝聞調にたしなめてくれたのですが、酔っぱらいに聞く耳はありません。
 果たして、その辛いこと辛いこと、一口すするたびに涙が出るというか、すすることは不可能というか、2口食べれば涙と鼻水が顔中を濡らし、3口目に突入 する前にビールの追加を頼み、4口食べる前にはドクターストップをかけられたボクサーの如くボー然としている自分に気がつきます。
 福島の蕎麦の「あざき」という大根も似たり寄ったりで人にやさしいものではありません。
 さて、話を元に戻し、なぜ福島で「高遠そば」かと言いますと、どうやら再来年のNHK大河ドラマにその側室が主人公となることに決まった徳川2代将軍秀 忠の第三子である保科正之に由来をするようです。正之は7歳のころ信濃国の高遠藩主である保科正光の養子になり、その後今の福島に当たる会津松平藩の最初 の藩主になっています。
 きっと彼か彼の異動に従った子分の誰かが、子供のころに食べた「すごく辛い」蕎麦を懐かしくて、辛い大根を探したところこの「あざき」大根があったので はないかと推測されます。昔の人はあんな辛い物を食べられたんだ、否、現在の人も食べているのですね、自信のある人は是非ご賞味をば。

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