1.    大根の災難

 台風の後にマイ畑に行くと、この前播いた大根の種がほとんど発芽していませんでした。

 「ガッティム、台風の奴め」と大根の畑に倒壊したゴーヤの柱と飛び散った白い防虫のための網を見ながら、荒れた土の上に右ひざを落としました。

 今回の台風が大きいことはよくわかっていましたが、ここまですごいとはと茫然自失としていたら、「あ、林さん、大根の種、コオロギに食べられちゃったね」と畑のベテランに声をかけられました。

 「こ、コオロギですか」と振り向くと、「コオロギは大根の種が大好きなんだよね」と言ったベテラン氏はいそいそと自分の畑方向に去るところで、私がまた自分の畑に目を落とすと、ほとんど土のみの状態で荒れ地が広がっています。

 皆さんもコオロギに気を付けてください、と言っても大根の種を土日に播く人はあまりいないでしょうから、参考にはならないでしょうが、それにしても「コオロギめ、無農薬だからって調子に乗りやがって」と、悪態をつきつつも、倒れた茄子の枝から収穫した汚れた茄子を播きなおした大根の種の近くに置き、「コオロギよ、君たちはこっちの方が好きだろう」と汚れた茄子でのかすかな意趣返しをすることくらいしかできないくらい、被災後の素人には知恵はないものなのですね。

税理士法人SETACS