僕の家に住む三匹の犬のうちの最若年のトイプードルの「うるーる」は走るのが大好きだ。僕が東京マラソン出場に向けて 練習を始めてから今日に至るまで1日も欠かすことなくランニングに付き合ってくれる。10kmだろうと20kmだろうと軽々と走る抜ける彼女は風に溶け 込んだ水彩画のようだ。
二つの川にはさまれた土手を走っていると、「うるーる」の息吹が聞こえてくる。ちらりと後ろを振り返ると彼女は「にやっ」 と笑い返してくる。でもそんな彼女にも弱点はある。土手から川に落ちても自力で50cmは段差のある石垣に前足をかけて登ってくるパワーを持つ彼女にも 苦手はある。
1つが他の大きな犬で、2つ目が小さな自転車、そしてなんといっても大の苦手は「うずくまった小さなおばあさん」だ。川沿いは畑だらけなのできっと農家のおばあちゃんたちの散歩の途中なのだろう。
土手の道は狭いので、前を歩く人や前から来る人とはかなり接近してすれ違うことになる。そんな時、彼女の「ハアハア」という息吹が聞こえなくなる。後ろを振り返ると彼女ははるか後ろでお座りをしている。苦手なものたちとすれ違うことができないのだ。
自転車も小さなおばあちゃんも「うるーる」にとってはみんな大きな犬に見えてしまうのだ。それでも、なんとか苦手を克服して彼女は僕の元に全速力で走ってくる。走ることが大好きなのだ。

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