ピアノの神聖であるグレン・グールドは、1955年のデビュー・アルバムでゴルトベルク変奏曲を録音し、1981年に再録音した翌年に急逝をしました。
グー ルドは言います。カイザーリンク伯爵は頻繁に不眠に悩まされ、睡眠薬代わりにおかかえのピアノ演奏家ゴルトベルクが弾ける落ち着いた曲を書くよ うにバッハに頼んだと歴史は語るのに、「この鋭敏で小気味よい作品」が果たして睡眠薬代わりになったかと言うと、疑問を抱からざるを得ない、と。
このゴルトベルク変奏曲は子守唄であるとの誤解は、バッハ好きの人の中にも根強くあり、実はこの曲に伯爵が求めたのは「眠れない夜を楽しく過ごせる穏やかで快活な音楽」だったのでした。
いみじくも天才であるグールドは、この曲は実は睡眠のための曲ではなく、「鋭敏で小気味の良い」曲であることを看過して、さらにその解釈を鍵盤に託し、世間の喝采を浴びたのです。
天才が創作した曲を天才が弾く、その喜びと興奮に眠れなくなった夜は、グールドのゴルトベルク変奏曲を部屋中に流し、ボウモア(アイリッシュ・ウイスキー)でも胃に流し込もうじゃありませんか。

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