ソフトバンクの携帯電話の売上が伸び続けているようです。
  以前に、ソフトバンクがNTT防御網の厚い壁に阻まれ、新規電話事業参入をあきらめ、孫正義社長がボーダフォンを1兆7,500億円で買収すると発表した ときは、みな驚き、「いくらなんでもそれはないだろう」と天を仰ぎ、「あーソフトバンクもついに終わりだな」とつぶやきました。
  しかし、今から考えると買収のカラクリは「さすが」と唸らせられるものでありました。
  その1兆7,500億円の金融機関からの借入れには、当然に担保が必要なのですが、その担保はなんとすべて「ボーダフォンの資産」なのですね。たとえ事業がだめになっても担保は「ボーダフォンの資産」なのだから、ソフトバンクも孫社長も痛くも痒くもないのです。
  失敗すれば、まあ企業の信頼は地に落ちるでしょうが、財務的にはどうってことないのです。
  言ってみれば、われわれ一般庶民が、家やマンションを買うときにその家やマンションを担保にお金を借ります。車を買うときもその車を担保にして、銀行やファイナンスがお金を貸してくれますが、
それと同じ理屈なのです。
  「あーこんなことなら、ボーダフォン買っとけば良かったなあ」なんて言っても、孫さんだから銀行もお金を貸してくれたのであって、どこをどう転んでも突っついても、銀行が私にこれだけの資金を貸してくれることはありえないでしょう。
  私「ボーダフォン買うからお金貸してくれませんか」
銀行「何台分のお金が必要ですか」
  私「何台分って言われてもなあ・・・まあ相当な台数であることは間違いないね」
銀行「事務所の皆さまで、お使いですか」
  私「って言うか、ボーダフォンの本体が欲しいわけなんで・・・」
銀行「はっきりと台数をおっしゃっていただかないと、当方といたしましても」
  私「だからボーダフォン本体を買いたいと・・・」
銀行「だから本体が何台必要なのですか」
と、まさにお話にならない、両者逆切れのような、会話が予測されます。
  このままソフトバンクの携帯電話の勢いが止まらないのであれば、「その慧眼恐るべし」と歴史家が賛嘆し、「あの時銀行に掛け合ってみれば・・・」(まだ言うか)と、私も悲嘆することになるのでしょう。

税理士法人SETACS