24. アタリメへの憧れ 2015.3月号掲載
段々と見る力が衰えて、メガネもついに「遠近」「中近」「近近」の3コ使いになってしまいました。
それと同時に「歯」も崩壊が始まり、全部自分の歯プラス親不知1本の29本のあちこちの歯が痛くなって来ました。
「先生、アタリメを食べる歯が欲しいんですけど」
「林さん、アタリメは舌の上で十分に転がして柔らかくしてから食べるものなのです」
「先生、それじゃマヨネーズと七味を生臭く食べているようなものですよ」と抵抗はしましたが、やはり柔らかいものを食べなくてはならないのかと「食物噛みごたえ表」を眺めると、1~10ランクにそれぞれ「推定咀嚼筋活動量」が出ていて、1ランクの0~200に豆腐やプリン、最大の10ランクの1800~クラスにはサキイカ、タクアンなどの最強食品がラインアップされています。
この数値を見ていると、サイヤ人の戦闘能力を思い出しますが、孫悟飯のように気の開放をして戦闘能力を上げることは、人間の歯では到底無理で、余計痛い思いをすることになるので開放しません。
私の父親が「せんべいは歯が欠けるくらい固く、味噌汁は舌がやけどするほど熱く」と言いながら、アタリメをかじり、ウイスキーをストレートで飲んでいる姿が瞼に浮かんできましたが、あの頃、父親は何歳だったのだろうか、そうだ、逆算すると約50歳くらいになります。
そうだな、そう考えると「アタリメ、舌で転がす」年齢は50歳が妥当なのか、アタリメを齧れるのはその位までか、剣先するめ中心にするか、もっと柔らかいイカは地球上に存在するのか、いやアタリメが柔らかくなってしまうとアタリメとしての見識を疑われてしまうのか、焼いたアタリメを細く裂けばいいのか、そうなるとアタリメとしてのプライドは、とか考えながらうつらと酒を飲む毎日です。