日本全国に漁港は2,914港あります。

 そのうち岩手県には111港、宮城県に142港、福島県に10港あり、そのほとんどの港で防波堤が壊れ、大きな被害が出ているのはテレビでの報道でその映像は記憶に新しいものです。

 その中で、農業には農協がありますが、漁業には漁協があり全国では2,700あります。

 そのうち70%の漁協は、本業は赤字ですが最終の組合収支は黒字になります。ここに現日本漁業の大問題があります。漁業の収支には本業のほかに「その他の収支」というものがあり、その中に原発、セメント工場、空港などなどの補償金・補助金が多額に入っていると思われます。

 また県は漁協に漁協権を与えているので、漁協は海で魚貝を養殖したり獲る権利、生け簀や筏を設置するに必要な漁協権を数十万から百万円以上で行使料として徴収しています。

 ここにメスを入れようというのが宮城県知事で、「地区の漁業者世帯数の70%が構成員になっている法人」「構成員の3分の2以上が特定区画漁業に常時従事する者」・・・要するに新しい漁業法人・・・に漁協と同じ権益を与えてしまい、閉鎖的漁業の改革をしてしまおうというものです。

 これは震災前からの提案で、漁協の猛烈な反発にあって頓挫していたのですが、震災で壊滅した港の復興とともに「やってしまおう」という強い意志を感じます。

 まあ結局は県の管理の法人を作ろうとしているわけで、今は自分で天候や潮を見て船をどこに出すのかを決め、魚群探知機で魚を探していた漁師さんたちが会社の社員になり、船長のことを部長と呼ぶようになり、「おい課長補佐、網を引け」「網が破れているじゃないか、網の手入れは主任の仕事だぞ」てなことになることも考えられますが、いずれにしても相当な時間と労力がかかることは想像に難くありません。

私などの部外者考えでは、どうせ漁協以外に許可を与えるのであれば、民間企業や個人の漁師の方々に直接許可を与えてしまった方が改革は早く進むのではないのかと思われます。

 また、こういった改革に漁協以外で真っ向から反対する人たちもいます。

 この漁師の賃労働者化は、その昔封建性社会から資本制社会に移行するときに、ヨーロッパでは杭を打たれた土地の中に縛り付けられていた農奴が解き放たれ、この農民たちが労働者階級となり強制的に資本主義の基礎を構築した歴史と酷似しているというのです。

 有名なマルクスのエンクロージャー(囲い込み運動)理論(今回は格調高いなあ)ですが、これは極端な話として受け止めるとしても、現実の問題は、約20%しか後継者がいない問題であり、東北で獲れた魚を食べてくれるのかという問題であり、人の英知が確かめられるこれからです。 

税理士法人SETACS